シングルモルト スコッチウイスキー タリスカー MADE BY THE SEA

LIFE WITH TALISKER 人生を豊かに彩るウイスキーコラム

氷ひとつでウイスキーの味わいは変わる! 日本が世界に誇る氷文化が生んだ「純氷」の魅力とは?

タリスカーを愉しむ

ウイスキーの愉しみを広げる純氷の魅力を知る

バーで飲むお酒がいつもより美味しく感じる、そんな風に感じたことはありませんか。今回は、バーやホテルが利用する老舗の氷専門店を訪問し、家庭の冷凍庫では決して作ることができない、「純氷」の魅力や成り立ちを取材。さまざまな氷を使ってのタリスカーの飲み比べレポートもあるので、お見逃しなく!

日本の製氷・加工の技術は
もはや芸術の域?!
プロが使う氷、「純氷」とは?

純氷とは

オン・ザ・ロック、ミスト、ハイボールなど、ウイスキーは飲み方によって、さまざまな表情を見せますが、その味わいや香りをいっそう引き立てるのに「美味しい氷」は欠かせません。

「家で飲むより、バーで出てくるお酒のほうが美味しい」と感じられるのは、多くのバーテンダーが氷にもこだわっているからです。

お酒を注いでも溶けにくく、雑味の少ない良質な氷を「純氷」といいます。もしかするとあなたが美味しいと感じたお酒には純氷が使われているのかも。

そこで今回は、昔ながらの純氷にとことんこだわり、多くのバーやホテルに卸している氷の仲買商、株式会社 氷屋を取材し、美味しい純氷の秘密について詳しくお話しをうかがいました。


明治に始まった日本の氷文化

明治に始まった日本の氷文化

「日本で氷商が始まったのは、明治時代。それまでは天皇家だけの特権だった氷が、一般の人にも浸透するようになった。そこから日本の氷文化が出発しました」と語るのは、株式会社氷屋の代表でアイスディレクターの鵜沢昭次さんです。


純氷のプロ

家業の氷屋の仕事場を見て育った鵜沢さんは、氷の性質から美味しさまで精通する「純氷のプロ」。

海外で一部動きはあるものの、良質な氷を追求する文化は、日本での歴史が一番古いといいます。

「氷商の業界は、昔から氷の生産者と当社のような仲買がタッグを組んで、より良い氷をお客様に届けてきました。
お酒を飲むのに理想的な氷とは、お酒の味を邪魔しない、溶けにくくて雑味を感じない氷。
それを業界内で切磋琢磨して、追求した結果、生まれたのが『純氷』です」

その純氷がどのようなものか、実際に工場内で見せていただきました。

純氷の塊は135kgもある

原氷 マイナス9℃の冷凍庫に保管された氷。純氷の大きな塊を「原氷」と呼びます

純氷は工場内の「氷室」と呼ばれる冷凍庫で保管・貯蔵されています。写真をご覧の通り、原氷とよばれる高さ約1メートルほどの大きな塊がずらりと並んでいますが、どのくらいの重さがあるのでしょうか。

「氷の規格は、明治時代にアメリカから伝わった規格が今でもそのまま使われており、原氷1個あたり300パウンドと決まっています。
重さは約135kgあって、これを36等分に切り出し、重さ約3.75kgの『1貫目』とします。
これを基本単位として、バーやホテルに販売しています」

純氷の塊大きな原氷が、高さ約30センチ、13センチ四方の角柱に切り出される

アメリカ規格のサイズで製氷し、日本独自の規格に加工して販売する、日本人らしい発想と工夫が光ります。


高品質な氷ができる秘密

高品質な氷正面からみる原氷。氷の裏側に回ったボブさんが見えるほど透明。中央の白い部分は凍らせる過程でできた気泡やミネラル。

横から見た原氷横から見た原氷。中央に見える薄い線が不純物。氷全体に対して、白く固まった部分はたったのこれだけ。
※純氷にとってはミネラルや溶存酸素も不純物となります。

溶けにくく、雑味の少ない純氷。そこには、氷づくりのための日本人らしいアイデアや高度なノウハウがたくさん詰まっています。純氷はどのようにして作られているのでしょうか。

「原氷は、原料となる水をアイス缶と呼ばれる容器に入れ、-8~-12℃の塩水のプールの中に浸して凍らせて作ります。
いわば昔のアイスキャンディの作り方そのもの。
原料水にエアーを注入して撹拌しながら、72時間かけてゆっくりと凍らせるんです。
こうしてできた原氷をメーカーから仕入れて、私たちの工場で加工を行います」

アイスキャンディの作り方製氷の原理は、懐かしい手作りアイスキャンディと同じ。氷に塩を混ぜると氷が0℃より低くなる「凝固点降下の原理」を活かして凍らせる

確かに大きな氷の塊を固めるには時間がかかりそうですが、もう少し早く凍らせれば生産力が上がるのではと思わずにはいられません。ですが、あえてゆっくり凍らせるのには、理由がありました。

氷の結晶が大きいほど溶けにくくなる

「我々が理想とする氷は、自然に凍った天然氷です。天然にできた氷は非常に溶けにくく、氷の結晶がとても大きいのです。
純氷はこれに限りなく近づけていくことを目指して作られるのですが、短時間で氷結させると氷の結晶が小さくなるので、割れやすく、お酒の中で溶けやすい氷になってしまいます。
長時間かけて凍らせることで、氷の結晶が大きくなるんですね」

また、時間をかけて凍らせる技術は他にもメリットがあります。

「水が氷の結晶になる際、内包する不純物を外へ排出し、純粋な分子(H2O)のみが並ぼうとする『排他的作用』という働きがあります。
急速に凍らせてしまうと不純物も一緒に氷結してしまうため、白い氷ができてしまいます。
空気で撹拌することで、氷の中央に不純物を寄せ、周囲に透明度の高い氷を固めることができます。これが純氷の最大の特徴であり、雑味の少ない味わいを生み出す秘けつです」

純氷を割れにくくする
もう一つの工夫

アイスアートアイスアートに使用するパーツは高めの温度でなければ加工できない

氷を割れにくくするための工夫は、製造プロセス以外にもあります。

工場内は1年を通じて、約10℃前後に保たれていますが、純氷を貯蔵する氷室は、工場内に2箇所あります。

加工用に貯蔵する場合はマイナス10℃前後の氷室を使用し、加工した氷はマイナス18℃前後の氷室に移します。

「氷は、温度によってさまざまに状態が変わります。
氷のカットやアイスアート用の彫刻を行うには、ある程度氷の温度を高くしておかないと、加工する際にたやすくクラック(ひび割れ)が入り、割れやすくなってしまうからです。
そのため、仕入れた氷はいったん温度が高めの氷室に入れ、加工してからさらに低温で固めるようにしています」

きめ細やかな氷の温度管理も、良質な日本の氷を支える大切な技術というわけですね。

アイスカッターアイスカッターと呼ばれる加工機械で原氷を切り出す様子

1貫目アイスカッターで3等分にした氷を、バンドソウ(帯のこ)を使って1貫目に加工していく


さまざまな種類の氷で
タリスカーの味わいの違いを比較

さまざまな種類の氷

さて、いよいよお待ちかねの実験タイム。

質の高い純氷を使うと、ウイスキーの味わいはどう変わるのか。4種類の純氷を並べて検証してみました!

シングルモルト アンバサダー、ボブさん

テイスティングをつとめるのは、当コラムではおなじみ、MHDモエ ヘネシー ディアジオのシングルモルト アンバサダー、ボブさんです。

4種類の純氷

今回実験に使用した純氷は、上の写真の4種類。

左から

  • 大粒の「クラッシュドアイス」
  • 小さめ粒状の「クラッシュアイス(小粒)」
  • 大きな球型の「ボールアイス(丸氷)」
  • 正方体の「キューブアイス」

「クラッシュドアイス」ハイボール

クラッシュドアイス

【ボブさんひと口MEMO】
溶けにくいクラッシュドアイスを使ったタリスカー スパイシー ハイボール。
スモーキーな味わいが感じられる、パンチの効いた仕上がりになりますね。
ハイボールの爽快感が続きますよ!

「クラッシュアイス(小粒)」ミスト

クラッシュアイス(小粒)

【ボブさんひと口MEMO】
クラッシュアイス(小粒)は、氷の表面積が大きくなるので、他の氷に比べて溶けやすくなります。
その分、タリスカーのフルーティな側面を感じやすい、さわやかな味わいに仕上がりますね。

「ボールアイス」オン・ザ・ロック

ボールアイス

【ボブさんひと口MEMO】
このボールアイスはスゴイです。
氷を手で回すとグラスの中でコマみたいに回るほどきれいな丸型でとても素晴らしい!
タリスカーを注いでも、ほとんど氷が溶けず、「キンキンに冷やしたストレート」といった味わいです。

「キューブアイス」オン・ザ・ロック

キューブアイス

【ボブさんひと口MEMO】
キューブアイスを使ったオン・ザ・ロックは、なぜかオイリーな味わいで、まろやか。
思った以上に飲みやすい印象に変わり、不思議ですね。


純氷で広がる
ウイスキーの楽しみ

究極の氷

溶けにくく、雑味のない究極の氷、純氷。
理想の氷を追求し、クオリティにこだわる日本の職人気質と情熱から生まれる氷文化は、まさに日本が世界に誇るべき文化の一つです。

ウイスキーの魅力をいっそう引き立てるなら、氷にもこだわりたいところ。バーでも自宅でも、さまざまな形状の氷を使った飲み方で、香りや味わいの違いをぜひ体験してみてください。

タリスカーとはABOUT US