LIFE WITH TALISKER 人生を豊かに彩るウイスキーコラム
タリスカーを知る
ウイスキーに欠かせない「水」の活かし方 チェイサーや加水のあれこれ
ウイスキーを楽しむとき、そこに合わせるお水がウイスキーの味わいや香りをいっそう引き立てます。ウイスキーの飲み方は、ストレート派もいれば、少量を加水する派、トワイスアップ派もいますね。ウイスキーに最適なお水というものもあります。今回は、ウイスキーと深い関係にある「水」について考えてみます。
マザーウォーターと呼ばれる
ウイスキーの仕込み水
ウイスキーづくりに欠かせない原料といえば、大麦やトウモロコシなどの穀物、発酵に必要な酵母、そして仕込み水、マザーウォーターです。
タリスカー蒸留所のあるスカイ島はミストアイランドと呼ばれるほど雨や霧が多く、タリスカーのマザーウォーターは蒸留所に近いホークヒルの湧水で、水質は「軟水」です。
タリスカー蒸留所以外のほとんどのスコットランドの蒸留所でも、軟水が使用されています。いっぽう、米国やカナダでは硬水が多いといわれており、仕込み水が軟水か硬水かによって、ウイスキーの風味も変わってくると考えられています。
割り水やチェイサーにも
軟水がおすすめ
ウイスキーの風味は水によって変わることから、ウイスキー愛好家の間では、蒸留所の仕込み水であるマザーウォーターを割り水に使うのが理想といわれています。
仕込み水に軟水が使用されているスコッチウイスキーには雑味の少ない軟水が合うため、多くのバーでは割り水やチェイサーに軟水のミネラルウォーターが好んで使用されています。
かといって、硬水で仕込まれたウイスキーに硬水が合うとは限らないのがウイスキーの不思議なところ。ミネラル分の強い硬水では、ウイスキーの味わいやニュアンスが変わってしまうことがあるためです。
プロの世界では
チェイサーは「常温派」が多い
それでは、チェイサーに使うお水はどんなものが適しているのでしょうか。
一般的に蒸留所のマスターブレンダ―や、ウイスキーのブランドアンバサダーといった、いわゆるウイスキーのプロは、ウイスキーのテイスティングで、氷なしの常温の軟水をチェイサーに選ぶ常温派が少なくありません。
以前の記事(お水をなぜチェイサーと呼ぶかご存知ですか?その理由と役割とは)で、チェイサーには、強いアルコールで痺れた舌をリセットする役割があるとご紹介しましたが、氷なしの常温の水がよいとされる理由は、氷水を飲むと舌が冷えてしまい、かえってウイスキーの微妙な味や香りの違いを感じ取る味覚がにぶってしまうからです。
多くのブレンダ―がこれを嫌って、チェイサーにはクセの少ない「常温の軟水」を推奨する人が多いようです。
ただし一般的には、アイラモルトに代表されるピート香やスモーキーなフレーバーを特徴に持つ香りや味わいの強いウイスキーには、よく冷えたミネラルウォーターが合うといわれており、スモーキーなタリスカーを飲む際にも試してみたい飲み方です。
加水することでしか
感じられない香りがある
ウイスキー愛好家の中には、スコッチはストレート派(ニート)が多い傾向がみられます。
確かに、シングルモルト ウイスキーが持つ個性的で複雑な香りや味わいをあるがままに楽しむことも、楽しみ方の一つではありますが、シングルモルトの魅力を存分に楽しむには、加水する方法もあります。
ウイスキーが空気に触れて酸化したり、あるいは加水によって新たな香りが立ち上ることを「香りが開く」といいます。これは、ウイスキーの強いアルコール成分によって抑え込まれていた香り成分が解放されて起こる現象です。
少量の水を加えてウイスキーの異なる面を楽しむには、割り水やチェイサーにやはり軟水を使うのが常道といえます。
また、以前のコラム(ウイスキーの香り、どうやって感じる? 究極のカッコいいテイスティング【vol.2 香りと味を楽しむ編】)でもご紹介した通り、ウイスキーは数滴ずつ加水するだけでも、香りと味わいは変化します。
スコットランドのパブでは、加水用のお水をコーヒーに付いてくるミルクピッチャーに似た小さな器でお水を出すお店もあるとか。少量ずつ加水してウイスキーの変化を楽しむのに、小さなピッチャーは確かに最適ですね!
加水による変化の境目を
探るちょっとマニアックな飲み方
最後に、加水をしながら香りや味わいの変化を感じる愉しみ方をご紹介しましょう。
やり方はいたってシンプル。お好きなウイスキーをグラスに注ぎ、まずはストレートでテイスティングします。それから、少量ずつ割り水を足して味を確認しながら、ストレートの風味がトワイスアップのまろやかな風味に変わる境目を探る、というものです。
トワイスアップは通常1:1の割合になるよう加水するものですが、実はウイスキーごとに味わいがガラッと変わる割合が少しずつ違います。
ウイスキーの飲み方は千差万別。自分好みのウイスキーや水の組み合わせをいろいろトライしながら、お気に入りの味と香りとなる飲み方を見つけてみてはいかがでしょうか。