LIFE WITH TALISKER 人生を豊かに彩るウイスキーコラム
タリスカーを愉しむ
街のあちこちで見かける「バー」の文字。バーってどんなお店のこと?
バーは、一般的に「敷居が高く、一人では入りづらい場所」とか「大人の社交場」というイメージがあります。
ですが、街にはワインバーやダイニングバー、最近ではスポーツバーなどもすっかり定着し、「バー」の名がつくお店だけでも何十種類とあります。そもそもバーとはどんなお店を指すのでしょうか?
「バー(BAR)」の由来や発祥は?
酒場としてのバーの歴史は古く、アメリカが発祥と言われています。アメリカ最古のバーといわれる、ニューヨークの「オールド76ハウス」の開業は1668年(しかも現在も営業中)。日本では鎖国が始まって間もない頃ですね。
バーの呼称の由来には諸説あります。
「西部開拓時代、酒場で酔っぱらいが酒樽から勝手に飲むのを防止するためにカウンターを設置したから」
「酒場の外に馬をつなぐための横木が付いていたから」
「酒場のカウンターの下に置いた横木が足をかけるのに丁度良かったから」
等々、西部劇に登場するような酒場の雰囲気は、確かにアメリカのバーのイメージに通じるものがあります。
ちなみにバーをオックスフォード英英辞典で引いてみると、
A counter in a pub, restaurant, or cafe across which drinks or refreshments are served. (ドリンクや軽食を提供するパブ、レストラン、またはカフェのカウンター)
とあります。
バーの本来の意味は「棒」や「横木」を指しますが、酒場でお酒を出すためのバーカウンターが設置されていたこととバーという呼び名は無関係ではなさそうです。
実際、日本でバーとつくお店には、大抵バーカウンターがあり、お店によっては「バーコーナー」と呼んでいたりします。
いずれにしても、バーとはバーカウンターがあり、お酒をサーブするバーテンダーやソムリエがいるお店、くらいには定義できるでしょうか。
さらに、バーの起源をもっとさかのぼると、源流はイギリスの「パブ」にたどり着きます。
英国では「パブ(PUB)」文化
近年では、日本でもアイリッシュパブやスコティッシュパブが人気となり、イギリス発祥のパブ文化も徐々に定着してきています。
ところで、なぜパブと呼ばれるようになったのでしょうか?
パブ(Pub)は、「パブリックハウス(Public house)」の略で、もともとは旅人の宿や食堂、酒場であったのが、それぞれに発展してお酒が飲める施設として「パブリックハウス」と呼ばれるようになったとか。直訳すると公共の家ですが、どちらかといえば「大衆酒場」というニュアンスに近いのではないでしょうか。
「仕事終わりに庶民が気軽に立ち寄ってお酒が飲めるお店」という具合に解釈すると、現在のカジュアルに楽しめるパブのイメージに近い場所だったことがうかがえます。
日本のバーの発祥は?
オーセンティックバーって?
では日本のバー文化はいつ、どこで始まったのでしょうか? 日本バーテンダー協会によれば、日本で最初にバーができたのは万延元年(1860年)に横浜の外国人居留地で開業した横浜ホテルだったそうです。
この背景には開業2年前の1858年に日本とアメリカで結ばれた「日米修好通商条約」があります。ペリーが来航した際、アメリカ船の立ち寄りに使える港として、下田・箱館が開港されましたが、これに加え、新たに6つの港が開港されました。その一つが神奈川(横浜)でした。アメリカの領事や外交官が駐留中に楽しむバーとして設置されたことは想像に難くありません。
横浜ホテルは木造2階建で、客室の他に、レストラン、理容室、そしてビリヤード場が設置されたバーがあったそうです。
日本人による初めてのバー
といってもここはあくまで外国人だけが利用できたバー。日本人により初めて開業したバーは、明治13年(1880年)に東京・浅草で開業した神谷バーがやはり有名です。この後、大正時代からバースタイルのお店が徐々に増えていき、大正12年(1923年)には巨匠F・L・ライトが設計した帝国ホテルのライト館がオープン、「オールドインペリアルバー」が開業しました。
オーセンティックバーって?
ちなみに、この「オーセンティックバー」がどんなバーか、ご存じでしょうか。
オーセンティック(authentic)とは「本物の」「確かな」という意味で、トラディショナルかつ正統派スタイルを大切にした大人のバーのこと。
多くの人がバーという特別感にあふれた空間をイメージするとき、多くの場合、このオーセンティックバーを指していると考えられます。まさに大人のための空間というバーのイメージを体現するものといえます。
どんな特徴があっても、
お酒が楽しめる空間を
提供するお店、それがバー
ここまで、アメリカ、イギリス、日本とそれぞれのバー文化や歴史をひも解いてきましたが、結局のところ、バーとは「人びとがお酒を飲み、楽しい時間を過ごす場所」という大きな共通点があります。
日本でのバーは、いわゆるバーやパブといったさまざまな要素を取り入れながら、カジュアルからオーセンティックまで、多彩なジャンルを生み出し、独自の文化として発展してきたスタイルといえます。
バーについては、あまり堅く考えず、自分らしくリラックスできるお店を見つける楽しみを広げていきたいですね。