LIFE WITH TALISKER 人生を豊かに彩るウイスキーコラム
タリスカーと生きる
カッコいい大人の生き方について話そう ~島地勝彦さんインタビュー~
シングルモルト ウイスキーをこよなく愛し、タリスカーびいきのエッセイも多数執筆。元週刊プレイボーイ編集長で、エッセイスト&バーマンの島地勝彦さんに男の美学についてインタビュー。InterFM897のラジオ番組「TALISKER Presents Golden Time of day」のゲスト出演後、サロン・ド・シマジ本店で行われた収録の模様をたっぷりとお届けします。
※本記事は、ラジオ番組が放送中の2016年当時の内容のままお届けしています。
カッコいい大人の理想郷、
サロン・ド・シマジ本店に潜入
収録前の島地さんと番組DJのMC RYUさん。
「TALISKER Presents Golden Time of day」では、10月23日・30日の2週にわたって、島地勝彦さんがゲストで登場。番組DJのMC RYUさん以下、大勢のスタッフを東京・広尾にある「サロン・ド・シマジ本店」に特別にお招きいただきました。
こちらは、島地さんの仕事場兼対談用のゲストルームで、島地さんの「えこひいき」でしか入室できない特別な空間。
中に入ると、島地さんが愛用するたくさんの小物や珍しいオブジェが飾られ、さらに圧巻はところ狭しと並んだ、圧倒的なシングルモルトのボトルの数々!しかも、ウイスキー愛好者なら垂涎のプレミアムボトルばかりで、まさにカッコいい大人を目指す人の理想郷です。
島地勝彦さん
1941年、東京都生まれ。青山学院大学卒業後、集英社に入社。『週刊プレイボーイ』『PLAYBOY』『Bart』の編集長を歴任。柴田錬三郎、今東光、開高健などの人生相談を担当し、週刊プレイボーイを100万部雑誌に育て上げた名物編集長として知られる。
現在は、エッセイスト&バーマンとして活躍中。 『甘い生活』『乗り移り人生相談』『知る悲しみ』(いずれも講談社)、『バーカウンターは人生の勉強机である』『蘇生版 水の上を歩く? 酒場でジョーク十番勝負』(CCCメディアハウス)、『お洒落極道』(小学館)など著書多数。
エッセイストとして活躍するかたわら、週末には自らプロデュースするブティック&バー「サロン・ド・シマジ 伊勢丹新宿店」のバーマンとして店頭に立つなど、多忙な日々を送る島地さん。
75歳とは思えないバイタリティと男の風格を備えた人生の先輩に、MC RYUさんが男の美学や生き方について徹底インタビューを敢行!
ここからは、お二人の贅沢なトークをお届けします。
68歳にして
エッセイストを目指した理由
お気に入りのトワイスアップメーカーで、プレミアムスコッチをその場にいる全員に惜しげもなくふるまう島地さん。
RYUさん:僕らがこんなたくさん準備をしてゲストをお迎えするのは初めてのことです。エッセイスト&バーマンで、男の中の男でいらっしゃる、島地勝彦先生です。今日はよろしくお願いします!
島地さん:こちらこそ。
RYUさん:僕は今48歳で子育てで手がいっぱいなんですが、いつかは男の美学が詰まったこんな世界にたどり着いてみたいと思っています。先生は48歳の時、編集者としてどんな活動をされていましたか?
島地さん:48歳の頃は、週刊プレイボーイ(以下、週プレ)を卒業して、『BART』という雑誌の創刊に関わっていた頃だったかな。私は25歳で集英社に入り、すぐに週刊プレイボーイの編集者になりましたが、創刊当時、周囲は皆30歳以上のベテランばかりで20代は私ひとり。だから大変だった(笑)。今から50年前の10月28日に週プレが創刊されましたが、30万部以上発行してほぼ完売。まだ雑誌に勢いがあった頃ですね。
私は67歳まで編集の仕事を続けた後、68歳からエッセイストをどうしてもやってみたかった。自分が学んだこと、知ったことを皆に伝えたいと思った。「人生は捨てたもんじゃない、面白いんだよ!」と。それがお世話になった人たちへの恩返しというわけではないけれどね。
「人生の師」と出会う
島地さん:週プレの編集者になってまもなく、眠狂四郎シリーズで知られる剣豪作家の柴田錬三郎先生の担当になりました。大先生です。人間の人生で重要なのは、出会いです。どれだけのすごい人に出会い、その人からの影響を受けるかで人生は大きく変わっていきます!
柴田先生の連載終了後、私は先生にぜひ自分の人生の師匠になってほしいと思い、「柴田先生、今後も週に1回、こちらに通ってよろしいですか」と訊いたら「島地、お前は面白いからいいよ」と二つ返事で快諾してもらった。それからずっと、先生が亡くなるまで通い続け、今でも墓参りに行きます。
私には人生の師と呼べる人物が、柴田先生のほかにも、同じく作家の今東光さんや開高健さんがいますが、こうしたすごい人たちとの出会いが私の人生に大きな影響を与えてくれたんです。
カッコいい大人の男に
必要なセンスとは?
「チェサレ アットリーニ」のジャケットを着こなす、ダンディな装いの島地さん。
RYUさん:サロン・ド・シマジ本店の空間には、本当に魅力的なモノがあふれていますけど、こうしたセンスは、どうやって磨いたらいいんですか?
島地さん:普通、子どもは母親が買ってくる身の回りのものをそのまま使うと思いますが、私の場合、小学生の時から、アンダーパンツでもソックスでも「全部オレが買いに行く」といって自分で揃えてました。母親が後で支払いに行ってました。
RYUさん:へえ~、そうだったんですね。今着ていらっしゃる赤いジャケットも、本当にオシャレですね。どこで購入されたんですか?
島地さん:これは、『グレート・ビューティー 追憶のローマ』というイタリア映画で、主人公が着ていた「チェサレ アットリーニ(Cesare Attolini)」のジャケットで、主人公がカッコよく着こなしているんです。映画にも感動しましたが、このジャケットが気に入って、伊勢丹のアットリーニに行ってみたら置いてなかった。
それで、映画に出てきたこのジャケットを入れてよ、といって入荷してもらったんだけど、1年しても売れない(笑)それでお店も1年も置いておけないからというので、今度は、サロン・ド・シマジ 伊勢丹新宿店のブティックに1ヶ月置いてみた、でもやっぱり売れない。それで責任をとってウン十万するジャケットを自腹で買ったんですよ(笑)
RYUさん:自分で責任をとって、というところがカッコいいですね!ダンディです。先生にとってダンディズムとはどんなものですか?
島地さん:ダンディズムをひと言でいうと、「やせ我慢」じゃないでしょうか。
RYUさん:やっぱりカッコいい男の人って、やせ我慢してるものなんでしょうかね(笑)
美しいもの、面白いもの、珍しいものを探せ
RYUさん:その他にセンスを磨くポイントはありますか?
島地さん:サロン・ド・シマジ伊勢丹新宿店のブティックを手がけるようになって気づいたのは、編集者と商人はよく似ているということ。週プレの編集長だったときは、とにかく美しいもの、面白いもの、珍しいものを探して雑誌を面白くしようぜ!と編集部員にハッパをかけていました。
それはブティックも同じ。美しい万年筆や珍しいパイプ、そんなものを置くと、よく売れるんです。
シングルモルト ウイスキーを愉しむ品の良いマルタグラス
RYUさん:そうなんですね!ところで、島地先生が伊勢丹のサロン・ド・シマジを続けている一番のモチベーションは?
島地さん:最初は、このサロン・ド・シマジ本店で伊勢丹の大西洋社長と対談させていただいたんですが、その際、大西社長に、伊勢丹でもこんな空間のお店を出しませんか、とオファーをいただいたんです。「それは願ってもないことですが、そうはいっても役員会議とかいろんな手続きがあるんじゃないですか?」というと、大西社長は「私が社長です」とその場でOKを出されるのを見て、男気を感じましたね。今でも、週に1度はバーに顔を出されますよ。仕事中なのでシングルモルトは召し上がりませんが(笑)
島地さんはスカルデザインがお好き。スカル模様にカービングされた愛用のスマホカバー。
タリスカーとのエピソード
広告コピーに脱帽した理由
これぞまさにプレミアム! 島地さんが大切に所蔵する幻の「タリスカー34年」のボトル。
RYUさん:島地先生にとって、タリスカーにはどんな印象をお持ちですか?
島地さん:もう2、30年前のことになりますが、飛行機の機内誌の中でタリスカー10年の広告を見たんです。私もタリスカーの故郷、スカイ島を訪れたことがありますが、そのスカイ島でみた風景同様に、荒れ狂う海の写真があって、そこに「Reach for the Skye」というキャッチコピーがあった。よく西部劇などで銃を構えながら「Reach for the sky(手を上げろ)」というセリフが出てきますが、「sky」を「skye」に変えて文字ったこのコピーは、本当に洒落てるなあと感心しました。まさに「お手上げ」です(笑)。
その後、何年も経ってから、タリスカー蒸留所の当時の所長だったマーク・ロッホヘッドさんにお会いした際に、この話をしたら、彼もこのコピーを覚えていて、それですぐに意気投合したんですよ。
私のように英語があまり得意でない人間にも伝わるんですから、それだけインパクトのある言葉だったのだと思います。
人生について学び
たどり着く先は、遊戯三昧の境地
壁に架けられた今東光さん自筆の書。「止観」という文字が意味するところは、「肉眼ではなく心の目で物を見よ」だとか。
RYUさん:これまではカッコいいことについてお話しをうかがってきましたが、反対に「カッコ悪い」と思われることって何ですか?
島地さん:まず嫉妬はダメですね。男も女も嫉妬する人間よりも、嫉妬される人間にならないと。嫉妬する人間は進歩がない。年齢や立場に関係なく、「こいつはすげえ」と思う人間にもしも出会ったら、その人の考え、センス、読んでいる本、すべて学ぶべきなんです。
それからケチもダメ。ケチよりも大勢にご馳走するような浪費家のほうがまだいいんじゃないかな(笑)
RYUさん:なるほど!まだまだ元気で活躍されている先生が、これから目指したいことは何ですか?
島地さん:まだ若い頃、尊敬する今東光先生が私に「遊戯三昧」という言葉を教えてくれたんです。「ゆげざんまい」と読むんですが、酸いも甘いも人生を心から楽しみ、知り尽くした先にたどり着ける境地のことです。「島地もこの言葉がわかるようになったら、ひとかどの人物になれたってことだよ」とおっしゃっていました。最近、少しずつ、この言葉の意味がわかりかけてきた気がしますね。
RYUさん:先生、貴重な面白いお話しの数々、本当にありがとうございました!先生、ラジオ番組、これからもやりませんか?
島地さん:いや、ダメダメ(笑)。私は自分で文章を書いて気持ちを伝えたい人間だから。本気ですべてをシュガーコートせずに伝えたいんだよ。テレビなんてもっとダメ。だって、これからもいっぱい悪いことをやろうと思っているから、顔が売れると困るよ(笑)
『TALISKER Presents Golden Time of Day』の詳しい番組情報はこちら
放送された曲目リスト
第4回(10月23日)放送分
Dr. Jeckyll and Mr. Hyde / Fast Life
MAC MILLER feat. Anderson .Paak / Dang!
Renee Neufville / Watching Me
Shirley Horn / Return To Paradise
Leon Ware / Telepathy
Lil’ Louis & The World / Dancing In My Sleep
Will Downing / Everything I Miss At Home
第5回(10月30日)放送分
Donna Summer / Theme From The Deep
Natalie Cole / La Costa
Didier Sustrac / Rue Du Paradis
Sting / English man in New York
Kim Cage Riley feat. Norman Brown / Perfect Paradise
Chris Rob / She’s on the Move