LIFE WITH TALISKER 人生を豊かに彩るウイスキーコラム
タリスカーを愉しむ
「シングルモルトをください」と「モルトをシングルで」の違いって？
当コラムでも頻出しているウイスキーのキーワード「シングルモルト」。でもちょっとひねって「モルトをシングルで」と言い替えてみると、あれっ？となりませんか？
今回は、シングルモルトをはじめ、わかっていそうで判っていない、まぎらわしいウイスキー用語・バー用語についてご紹介します。
改めて知っておきたい
シングルモルトの意味
バーで注文をする際、「シングルモルトをください」と「モルトをシングルでください」、このまぎらわしい注文内容の違いがすぐに分かりますか？
前者は「シングルモルトウイスキーをください」という意味ですね。
以前のコラム（「あなたって個性的ね」はほめ言葉？ 「シングルモルト」ってどんなウイスキー？）でもご紹介しましたが、「シングルモルト」の「シングル」とは、「単一の蒸留所で製造されたもの」、「モルト」は大麦麦芽のみを原料としたモルトウイスキーという意味です。
「シングルモルト」の「シングル」とは、「単一の蒸留所で造られたウイスキーをボトリング（瓶詰め）したもの」、「モルト」は大麦麦芽のみを原料としたモルトウイスキーという意味です。いっぽう、後者は「モルトウイスキーをシングルでください」という意味です。
大麦を原料としたモルトウイスキーという点は共通していますが、この場合の「シングル」とは、ウイスキーの量のことですね。
シングルモルトによく似た
シングルカスクって何？
次は「シングルカスクで、何かおすすめはないかな？」という注文内容の意味はいかがでしょうか？
シングルモルトじゃなくてシングルカスク？ またしても、まぎらわしい言葉が飛び出してきました。バーに通い出したばかりの人には耳慣れない「シングルカスク」とは、どんなウイスキーのことでしょうか？
ここで、「シングルモルト」についてのもう少し詳しい説明が必要になります。
シングルモルトは確かに、「単一の蒸留所で造られたウイスキーをボトリングしたもの」ですが、正確には「同じ蒸留所で造られた、複数の樽のモルト原酒を混ぜ合わせてボトリングしたもの」という意味です。
シングルモルトウイスキーは、蒸留所の個性を表現しながら、味わいと香りを保つために、複数の樽の原酒を混ぜ合わせて、調整を行っています。これを「ヴァッティング」といいます。 対して「シングルカスク」は、「蒸留所の中の数ある樽から一つだけを選んでボトリングしたウイスキー」のこと。蒸留所が、これぞという樽を選び抜いた逸品といえるでしょう。一つの樽からしか造れない非常に希少性の高いウイスキーになります。
お会計に必要な
チャージとチャームの違い
さらに、バーでお会計の際、
「チャージ込みで＊＊＊円になります」
と言われたことはありませんか？
ご年配の方は「あれ？ チャージかあ。チャームじゃなかったっけ？」
なんて言い出すかもしれません。
「チャージ（charge）」とは、一言でいえば「席料」のことを指しますが、一般的には「サービス料」という理解で間違いはないでしょう。アメリカ式のチップまではいかなくても、おしぼりを出したりなど、きれいな席をお客様のために用意したりと、バーもサービス商売なので、チャージ料がかかる場合があります。
いっぽう「チャーム（charm）」とは、バーで出てくるナッツ類や簡単なおつまみ、いわゆる「お通し」のことですね。意味合いとしてはやはりサービス料に近いものですが、最近のバーではあまり使われず、スナックなどで使われるちょっと古風な言葉です。
チャージやチャームは、どちらか一方の場合もあれば、両方をセット料金として支払うお店もあります。客の立場としては、どちらかにしてほしいのは山々ですが、バーでの時間を楽しく過ごしたら気持ちよく支払うのが、カッコいい大人ですね。
中にはこんな勘違いも
シングルモルト、モルトウイスキーのシングル、シングルカスク、さらにはチャームとチャージなど、バーで使われるウイスキーの関連用語は、まぎわらわしいものが多く、バー初心者だけでなく、それなりに経験のある人でも、ふとわからなくなってしまうことが時にはあるようです。
タリスカーのブランド担当者は、あるバーでウイスキーを楽しむ男性が、「国産のスコッチってあまり飲まないので」と話されているのを耳にして驚いた経験があります。
ですが、よくよく考えてみれば、「スコッチ」自体がウイスキーの代名詞として認識された上での勘違いということなら、バーでのスコッチウイスキーの存在感は決して小さくはないといえるかもしれません。
とはいえ、スコッチはスコットランドで作られるウイスキーです。どうかお間違えなく!