LIFE WITH TALISKER 人生を豊かに彩るウイスキーコラム
タリスカーを愉しむ
沈没船から発見された100年以上前のウイスキーは、夢とロマンの味がする?
世間はさまざまなニュースであふれていますが、ウイスキー好きが気になるニュースといえば、時折発見されるオールドボトルの話題。中には100年以上前につくられたオールドボトルが見つかったケースも。それほど古いウイスキー、いったいどんな味がするのでしょうか? 今回は夢とロマンのウイスキーの話しを集めてみました。
カナダ・ヒューロン湖の
沈没船から発見された
100年前のウイスキー
最初にご紹介するのは、カナダにある五大湖のひとつ、ヒューロン湖で見つかった沈没船から引き揚げられたウイスキーです。
この沈没船は、1913年に嵐で沈没したカナダの貨物船SS レジーナ号。
その後、1986年に初めて船内の荷物が一部引き揚げらた際、ウイスキーやシャンパンなどの酒類が見つかり、1988年にニューヨークのクリスティーズに出品され、1本90ドルで落札されました。
さらに、2013年には、沈没からちょうど100年ということで、さらに引き揚げられた酒類が別のオークションに出品されました。
この中にはスコッチウイスキーのホワイト&マッカイが3本、デュワーズが2本、そのほか、シャンパンも含まれていたそうです。
どちらも昔からアメリカではメジャーなスコッチの銘柄ですが、保存状態は不明で飲めるかどうかはある意味で賭けに近いものだとか。
しかし、100年前のウイスキーには変わりありません。抜栓した中身は、夢か、ロマンか、それとも…。
映画化されたオールドボトル
1941年の沈没船から発見
次の沈没船は、1941年、スコットランドのアウター・ヘブリディーズ諸島にあるエリスカー島北岸の沖で沈没したSS ポリティシャン号です。
SSポリティシャン号はニューヨークへ向けて航行中でしたが、砂州に乗り上げて座礁しました。ところが、乗組員が避難し船の引き揚げを待つ間に、地元の漁師が船に忍び込んで大量の密輸ウイスキーを発見。その数、24万~26万本もの量だったとか。夜の間にウイスキーの約1割を運び出すものの、荷主や当局の捜索により、盗みに加わった19人の島民はあえなく御用となり、その後1か月間投獄されたそうです。
あまりにもスケールの大きい仰天のニュースはまたたく間に広まり、コンプトン・マッケンジーという作家が、『ウイスキー・ガロア! (1947)』という小説にしたほど。1949年に同名のタイトルで映画化もされました。エキストラとして登場する島民たちは、何とすべて実際の島民というエピソードも残っています。
事件当時の1941年は、英国は戦時中でスコットランドでもウイスキーは配給制。島民は滅多にウイスキーを口にできなかったそうです。まさに犯行の動機は「どうしてもウイスキーを飲みたい一心」だったところに、人間味を感じますね。
スコットランドの工事現場から
121年前のスコッチを発見?
今度は、海ではなく、陸で見つかった121年前のウイスキーの話です。
発見されたのは、スコットランドのハイランド地方、キンガスジーという街のスペイ川にかかるラスベンロードブリッジの工事現場でした。
橋の工事をしていた作業員たちが見つけたのは古いタイムカプセル。シューズボックスほどの大きさの金属製の箱から、1894年9月の新聞と、ウイスキーのボトルが発見されました。ウイスキーの正確な年代が分かったのは、新聞も一緒に納められていたからだったのですね。
このウイスキーが、ブレンデットかシングルモルトかも不明ですが、ウイスキーの濁りは見られず、保存状態も良かったとのこと。中身は当時から操業していたダルウィニーともトマーティンとも推測されていますが、真偽のほどは不明。ですが、オールドボトルファンならずとも、誰もが一度は試飲してみたいと思う逸品ではないでしょうか。これこそまさにプライスレスの夢とロマンです!
何と南極の氷からも発見!
2010年初め、イギリスの南極探検隊が約100年前に南極の氷の下に埋められたウイスキーの木箱を発見しました。
発見されたのは、スコッチウイスキーのマッキンレー(Mackinlay)が入った木箱。南極の氷点下30度の環境下で、木箱は完全に凍結していましたが、ウイスキー自体は凍っていなかったそうです。
このウイスキーは、英国のアーネスト・シャクルトン(Ernest Shackleton)の探検隊が1908年に南極に持ち込んだもので、探検隊の小屋の下から見つかったとのこと。
その後、ニュージーランドの博物館へ送られた木箱は、ゆっくりと時間をかけて解凍され、割れないよう紙とわらで包まれた11本のマッキンレーが見つかりました。保存状態が良好だったため、ウイスキーの成分分析に成功し、現在、復刻版のマッキンレーが販売されています。
ちなみに、見つかったうちの1本は開栓されており、探検隊のメンバーが「こっそり盗み飲み」した形跡があったとか。極寒の南極で隠れて飲むウイスキー、きっと格別の味わいだったことでしょう。