LIFE WITH TALISKER 人生を豊かに彩るウイスキーコラム
タリスカーを知る
ウイスキーの熟成に必要不可欠な樽は、もともと○○するためのものだった!?
ウイスキーの味や香りの決め手の一つが「ウイスキー樽」。ウイスキーの魅力に少しずつ目覚めてくると、
周囲で「樽の話をしているけど何のことだろう?」と思ったことはありませんか?
今回はウイスキーを育み、求める味わいや香りを得るために使われる「ウイスキー樽」についてご紹介します。
ウイスキーを樽に
入れるようになった理由
ウイスキーづくりに絶対欠かせないものの一つ、それがウイスキー樽です。
作られたお酒が「ウイスキー」と呼ばれるためには、樽で熟成することが絶対条件で、スコッチウイスキーであるタリスカーはもちろんのこと、バーボンや日本のウイスキーも法律でそう定められており例外はありません。
では、なぜ樽で熟成するようになったのでしょうか。
意外に古い樽の歴史
そもそも現在のようなコンテナがなかった昔の時代は、飲料を始め、身の回り品などありとあらゆるものの保管や運搬に樽が使われていました。樽は2000年近い歴史があり、帝政ローマ時代の3世紀頃には、ローマ人はガリア人との交易を経て樽を使い始めたといわれており、ガリア人はその数世紀も前から樽を作っていたとか。映画などに登場する昔の船には、必ずといってもいいほど樽が積んでありますよね。
ウイスキー樽が誕生した理由
ウイスキーが誕生した1700年代の前半、イングランド政府はウイスキーへの課税と密造酒の取り締まりを強化しました。当時のスコットランドは、多くの開拓者や移民が移住し、儲かるという理由でウイスキーが国じゅうのあちこちで作られていました。
スコットランドとイングランドは昔からの犬猿の仲。スコットランド人は税金を徴収する役人の目を逃れるために、蒸留されたばかりのウイスキーを、当時よく飲まれていたスペイン産のシェリー酒の空き樽に詰めて、隠していたのです。
役人の摘発から逃れたウイスキーは暫く樽に入れていたことで、琥珀色の液体に変化し、味や香りまでもが芳醇になったのです。
樽は味わいと香りの手がかり
樽の種類によって、色や香り、味わいまでも大きく変わってくるのがウイスキー樽の不思議な魅力の一つ。特にシングルモルトウイスキーにおいては、個性的で質の高いウイスキーを生み出すため、蒸留所による樽選びとその確保は非常に重要な仕事です。
シェリー樽とバーボン樽
ウイスキー樽について、知っておきたいのが樽の基本的な分類のしかた。
例えば、先ほどご紹介したシェリーの入った樽は「シェリー樽」と呼びます。同様に、アメリカ南部で生産が盛んなバーボンウイスキーの熟成に使用される樽を「バーボン樽」と呼びます。バーボンは原料にトウモロコシ等の穀物を使うウイスキーですが、その熟成には必ず新しい樽を使うことが米国の法律で定められています。そのため、一度使ったバーボン樽はバーボン以外のウイスキーの熟成のため、海外で利用されるようになったのです。
シェリー樽、バーボン樽とは、その名のとおり、元々入っていたお酒の種類で樽を分類する際の呼び方です。
いっぽう、「オーク樽」という言葉も耳にしたことはありませんか?オークとは、樽に使われている木材の種類を指します。実はこのオークこそが、ウイスキーをはじめ、さまざまなお酒の熟成において最も影響を与える要素の一つとされています。
ウイスキー樽の代表格といえるオーク樽は、「アメリカンオーク」「ヨーロピアンオーク」の2種に大別され、それぞれ熟成後の味、香りに違いが現れます。
米国産のアメリカンオークは主にバーボンの熟成に使われ、この樽で熟成したウイスキーはバニラやトロピカルフルーツのようなフローラルな香りになる特徴を持つといわれています。
これに対し、ヨーロッパ産のヨーロピアンオークは、シェリーなどの熟成に使われ、ドライフルーツやシナモン等の香りが特徴といわれています。
ウイスキーにとって樽は、その味わいを左右する重要な要素です。
タリスカーの樽へのこだわり
ウイスキーメーカーによって、どんな樽を使用するかのこだわりがあります。新しい樽を使用することにこだわるメーカーは、新しい樽ほど前に入っていたシェリーやバーボンの影響、木材の香味がウイスキーに浸透しやすいために、芳醇なウイスキーが生み出されます。
タリスカーの樽のこだわりはといいますと、長年使用した北米産アメリカンオーク樽を使用するというこだわりがあります。これはタリスカーが本来持っている特長などを前面に出したいので、樽からの影響を最小限にしたいためです。
ワイン樽がタリスカーの
熟成に使われている!?
ウイスキーの熟成には、シェリー樽やバーボン樽以外に、様々な樽が使用され始めています。
例えばワインの熟成に使用された樽も最近注目されています。
先ほど、タリスカーはアメリカンオークを使用すると書きましたが、実はワインの樽を使用する銘柄があります。
それが、「タリスカー ポートリー」です。アメリカンオークの樽で熟成したタリスカーの原酒をポルトガルでつくられる甘口のワイン、ポートワインの樽で追加熟成させたウイスキーです。
実は19世紀にスカイ島最大の港町ポートリーが、ポートワイン貿易によって栄えたという歴史があり、それがルーツとなって誕生しました。
商品名の「PORT RUIGHE」はゲール語で表記されていますが、蒸留所のあるスカイ島の港町ポートリーの名前にちなんでいます。
タリスカー独特の力強い潮の香りと、ポートワイン樽由来の赤いベリーのリッチな甘い香りが融合した、最高のコントラストが楽しめる味わいに仕上がっています。
ウイスキー樽による味や香りを
楽しむために
今回ご紹介した樽の種類や知識はほんのごく一部。魅惑的な琥珀色と香り、そして舌の上で感じる奥深い味わいが魅力のウイスキーを楽しむなら、ウイスキー樽に由来する風味を感じられるよう、ゆっくり丹念に、時間をかけて味わってみてはいかがでしょうか。
ウイスキーを飲みながら、樽の中で長い年月にわたって熟成されていたことに想いを馳せてみるのも大人らしい時間の過ごし方といえるでしょう。